家族の強い結びつき

中国人がオーストラリアを選ぶ理由 その2

前回の記事の終わりに、子どもが永住権を取得した後、家族用の永住ビザでその親も永住権を取るケースがけっこうあるらしいと書きました。

私は小さな子どもを連れて移住したので、オーストラリアで知り合った日本人はほとんどが子どものいる母親です。彼女達は結婚することでを永住権を取得した人が多いので、私は、永住権を取るには仕事か結婚だけが手段なのだとずっと思いこんでいました。

中国系住民が多いエリアに行くと、ご老人に中国語で声をかけられることがあります。また、子どもの小学校にも、孫を送迎している中国系の祖父母の方達がいます。彼らは英語を話さないので、どうやって永住権を取ったんだろう?と不思議で仕方ありませんでした。何しろ永住ビザの取得に大変だった私達(とったのは夫ですが)から見ると、大勢の中国人が易々と移住しているように見えたからです。

ビザは細分化されていて、取得条件も複雑でわかりにくいです。家族用永住ビザについて調べてみると、両親用永住ビザというものがあることを知りました。これまた何種類かあるのですが、お金をたくさん払って数年で取得できるものと、お金をあまり払わない代わりに取得までに何十年もかかるものがあるようです。種類によっては30年近く待つなんて、もう永住権を与える気ないよね?と思ってしまうのですが、永住権は、稼いで税金を納めてくれそうな人に与えられるものなので、高齢者はそう簡単には取得できないのでした。また、永住者の親は観光ビザよりも長く滞在できるビザがあるので、それらを利用している人も多いのかもしれません。

オーストラリアの中国系社会は大きいので、英語が話せなくても生活できてしまいます。それでも、歳をとってから住み慣れた土地を離れ、知り合いは家族だけという外国に引っ越すのはとても勇気がいることです。私の両親がオーストラリアに移住するのは考えられないし、旅行でさえもあまり気が進まないようでした。周りの日本人で親を永住させている人もいません。なのに中国人はお年寄りが移住するのはなぜでしょう。

祖父母と孫

オーストラリアの放送局であるSBSの記事“Parents of China’s ‘one-child policy’ are facing a 30-year wait to join their children in Australia”を見つけました。働く親を支えるために祖父母が孫の面倒を見て、子どもは年老いた親の世話をする、頼り頼られの強い家族の結びつきがある中国。一人っ子政策(1979~2014)で子どもが一人しかいない家庭が増え、その一人っ子が海外に移住してしまうと、親も子どもについていくしかないのです。私のまわりにも三世代同居の中国人家庭がたくさんあります。たいてい共働き家庭なので、昼間は祖父母が孫の面倒を見ています。少し前の日本での女性の役割(家事と子育て)に似ていますね。

実際、義両親と同居している中国人の同僚は、「料理は全て義父がするから、私は絶対にしない。義父がいないときは外食する」と言っています。また、中国人の祖父母は孫の世話をしにわざわざ中国からやってくるという話題になった時、私が「うちの親は全然オーストラリアに世話に来ないよ」と言うと、別の中国人の同僚に「日本人の親は独立してるね。自分の人生を生きてる」と言われました。中国人は家族に対して尽くすのが一般的な生き方なのかなと思いました。

私がオーストラリアに移住すると言った時に、賛成も反対もせず送り出してくれた両親。子ども達が家を出た後、自分の時間を持てて嬉しいのか、それとももっと子や孫の世話をしたり、自分も世話になりながら関わりたいと思っているのか。遠くに住む親の本当の思いは何だろうと考えて、少し胸が苦しくなりました。

それにしても、両親や義両親と同居だなんて、なかなか簡単に決断できないと思うのです。語学学校で中国人に「日本では結婚相手の親に初めて会いにいく時、プレゼントを持っていくんでしょ?」と聞かれたことがありました。「そうだね、持っていくと思う。中国では持って行かないの?」と答えると、「ないない!」と何人かが笑って言いました。笑うレベルでありえないことなの?と思いましたが、中国では義両親はあまり気を使う存在ではないんでしょうか? それとも贈り物を気軽にしないのかな? 機会があったらきいてみよう。

オーストラリアにいると、似た文化や見た目を持つ中国人にとても親近感を感じます。でもちょっとしたところが違っているのを知るのはとても楽しいし、自分自身や日本について客観的に見るきっかけにもなるので、視野が広がりますね。

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