去年、ワーホリでオーストラリアに来た女性が介護士で月80万円を稼いだと話題になりました。本当にこんなことが可能なのでしょうか?
オーストラリアの平均賃金はオーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)によると、フルタイム労働者で月約7500ドル(約75万円)。月80万円はこの平均賃金を上回っています。
正直私も、介護で80万と聞いて、本当に?ってびっくりしました。メディアで取り上げられるくらいだから極端な例なのでは?とも思いました。ましてワーホリ、若い外国人労働者で、経験も長いわけではないですよね。話題になった方は、オーストラリアでは派遣会社に登録していた、老人ホーム(aged care home)で働く一般的な介護士(personal care worker)だったようです。
オーストラリアの最低賃金は時給23.23ドル(約2300円)で日本の倍以上と有名ですが、これを決めているのがFair Work Commission。ここは、業界別の最低賃金も定めています。これらは毎年見直されます。
介護業界の法定最低賃金(aged care award)を調べてみました。このページの“Aged Care Award”からダウンロードして見ることができます。他の業界についても同じページから探して調べることができますが、賃金体系が複雑で、はっきり言ってよくわからないです。
彼女はカジュアル労働者(casual employee)です。オーストラリアの雇用形態は基本的に3種類あって、フルタイム(full-time)とパートタイム(part-time)、そしてカジュアル(casual)です。フルタイムとパートタイムは労働時間が保証されており、有給の休暇が付与されます。一方、カジュアルは、労働時間は不規則で有給休暇もなく、必要が無くなればすぐに解雇されてしまいます。その代わり時給が25%高く設定されています(casual loading)。
つまり、カジュアルはたくさん働くとフルタイム労働者より稼げる可能性があるんです。病気や旅行などで休むと減ってしまいますけど。
老人ホームで介護士として働くには、オーストラリアの資格(qualification)が必要です。最低ラインの資格を取得し、介護未経験のカジュアル労働者として働き始めたばかりだと、法定最低賃金は時給34.46ドル(約3400円)になるのではと思います。これでフルタイム並みに週38時間働くと週給1309.48ドル、1ヶ月が4週間だとして月給約5240ドル(約53万円)になります。十分高く感じるけど、80万円には遠いですね。
ですが、老人ホームは24時間365日(24/7=24 hours a day, 7 days a week)なので、土日祝日、夜間の出勤もあり得ます。毎週土曜と日曜に出勤した場合だと、土曜は時給48.25ドル、日曜は時給55.14ドルなので、週給約1570ドル、月給6280ドル(約63万円)になります。さらに祝日に出勤すると時給75.82ドル、それに夜勤などが入ったりすれば、月給7000ドル(約70万円)くらいはいけそう。イースターみたいに祝日が多い月だと80万もありうるかな?
最低賃金で計算しましたが、indeedやseekなどの求人サイトを見ると“Above award wages”や、“Excellent hourly rate”と書いてある求人もあるので、法定最低賃金より多く払うところはたくさんあると思います。また、彼女の時給は40ドル以上だったそうなので、日本で看護師として働いていた経験を買われて時給が上がったことも考えられます。オーストラリアでは経験があるととても有利なんです。だからワーホリでも月給80万円を稼げたのかもしれません。
どんな仕事も大変ですが、介護はとてもストレスの溜まる職場だと聞きます。体力も使うし、気も遣います。まして英語が堪能でないと辛いことも多いでしょう。仕事上の会話はまぁ何とかなっても、雑談がこれまた難しい。しゃべるスピードは速くなるし、知らない言い回しも出てくるし。私はいまだに雑談が苦手です。でもオージーって雑談が上手な人を好むように思います。レストランやカフェで、バス停や道端で、知らない人同士なのに親しげに話しているんですよね。
上記の記事では、オーストラリアの職場はユルいとありますけど、それでも欲しいのは、真面目にきちんと働き、周りとコミュニケーションがとれる人です。特に人の命を預かる職場ならなおさら。彼女は目標を持ち、しっかりと準備してオーストラリアに来たようですし、真面目で向学心があり、体力と精神力もあるのが経験談から伺えます。ワーホリに行ってみたら80万稼げた!というのはなかなか普通ではないと思いますが、40~50万くらいなら現実的だと思いますよ。
最後に、彼女の経験談はリアルだなと思いました。オーストラリアで稼いでみたい方には参考になるのではないでしょうか。
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